理学療法士による体の痛みの話  五十肩だと思って放置すると大変なことに・・・

肩の痛みの話

 

この仕事をしていると色々な人から様々な相談を受けます。

ご本人の事もままあるのですが、結構多いのはお身内の方の相談です。

 

「うちの父親の腰痛が酷くて、いつもこの辺り(腰を指差して)が痛んで歩くのもままならないんだけど」とか

 

「旦那が膝が痛くて階段の上り下りがしにくいらしいんだけど、何かいい運動とかない?」等々

 

ご本人に不調がある場合なら、「ここがこんな風にすると痛くて…」とかこと細かく教えてくれたりもします。

 

しかし、結論から言わせていただきます。

残念ながらそれだけではよくわからないのです。

 

ご本人がそこにいないのに、症状だけ又聞きさせられてもすぐに原因なんてわかりません。

ご本人がいたとしても、立ち話的に症状だけ伝えられてもやはり原因なんてわかりません。

画像所見だって必要です。もちろん私たちは診断が出来ません。ドクターの診断が必要なのです。

 

だいたい、腰や肩や膝などに痛みがある方たちは、皆ほとんど似たようなことを訴えられます。しかし、実際に姿勢、体の使い方等を観察し、体に触れると痛みの原因は皆違うことが解ります。

 

症状を聞いただけで原因を決め付けたりすると、症状の悪化につながることもあるのです。

 

このことが一番当てはまると私が日ごろ感じているのが、いわゆる「五十肩」です。

 

肩の痛みは経験した方が比較的多く、その中には専門的な治療を受けることなく痛みが治まってしまったという人も少なくないでしょう。

そのような人たちは「肩が痛い」という人を見ると、つい他人事とは思えず、前人として自分の経験談をしてしまうのです。もちろん悪気は一切なく、本当にその人の役に立ちたいという慈悲深い人なのだと思います。

 

「放っておくと肩が固まるから出来るだけ動かした方がいい」という教えは非常に広まっているように感じます。しかしこれを忠実に実行して症状を悪化させてきた人を、私は今までに何人も見てきました。

 

中には「ゴルフをやったら『バキッ』と音がしてそれから痛みが無くなった」などという猛者に教えを乞うた為に、夜も眠れない激痛に見舞われた人もいました。

 

肩関節は膝や指の関節と違って様々な方向に動きます。その分肩の動きにはたくさんの筋肉や靭帯、関節が関わっており、痛みの原因も多岐に渡るのです。

 

そもそも「五十肩」とは何でしょう?

呼び名の由来には「50歳台で発症することが多いから」とか「手を上げたときに肩の高さから50°で痛みがでるから」などの諸説があるようです。

 

基本的には肩の痛みがあるにもかかわらず、肩周囲の組織に異常が見られない場合を指します。疾患名は「肩関節周囲炎」(厳密にはもっと狭い範囲に限定できますが)とされています。

「どこの組織にも損傷は見られないが、肩の痛みがある」という何となくぼんやりとした広範囲の状態を示します。

 

原因は肩だけでなく、首、背中、腰その他体のあちこちの疲労や、筋肉のバランスの悪さであることが多いです。このように書くとたいした疾患ではないように思われるかもしれませんが、炎症が酷くなると痛みで不眠となったり、身の置き所の無いような痛みに悩まされることも少なくありません。

 

早期に治療すれば短期間で治癒しますが、重症例では痛みが無くなるまでに、多くの時間を要したり、肩の動きに制限が残る等の後遺症が残ることもあります

 

では、どこかの組織に問題がある場合はどうでしょうか?

不用意な運動で組織の損傷が広がってしまうことは、容易に想像できますよね。

 

 

要するに「あなたの肩痛はあの人の肩痛とは違う」のです。

自己判断や人のアドバイスを鵜呑みにせずに、専門家に相談して下さい。

話だけではわかりません!!出来るだけ早く専門の医療機関での受診をお勧めします。

 

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